こんにちは。三島友紀FP事務所の三島です。またしばらくブログがあいてしまいました。仕事が忙しくなってきたり、取得を目指している行政書士の勉強に時間を使ったり、下の子どもが甘えん坊すぎて1歳過ぎたのに抱っこを執拗に求めてきたりとなかなかバタバタした日々でした。ま、言い訳を言っても始まりません(笑)短くてもなるべくブログの更新は行っていき、皆様に少しでも有益な情報を提供できたらと思います。

タイトルの<政府が国民に老後資金を2,000万円貯めろと示唆した?>についてですが、6月3日の事になります。金融庁から金融審議会市場ワーキング・グループ「高齢社会における資産形成・管理」報告書が公表されました。こちらは2018年から全12回にわたり、高齢社会と資産形成について、有識者の方々が議論を行なって出た一定の結論をまとめたものです。今の時点では報告書として、国民1人1人にメッセージを送っているにすぎません。が、今後これを元に年金制度改革や、金融政策を決めていくような可能性は十分にあります。

内容は後述しますが、報告書には年金だけに頼らず各個人で2,000万円自助努力で貯めろ。といった内容が書かれており、この報告書を受けてニュースやSNSでは
「老後資金を2,000万円貯めないといけないなんてふざけるな」
「年金は100年大丈夫とか言ってたのは何だったんだ」
「そんな貯める余裕どこにあるんだ」
「年金なんて払い損だ」
とかなり荒れていました。

中にはこのようなデモを呼びかけるようなSNS上の書き込みもありました。

皆さんの怒りはごもっともだな。というのが大前提としてあった上での私の考えですが、老後資金を貯めないといけないという点に関しては異論はまったくないのです。FPや金融業界の中ではかなり昔から年金以外に資産形成をするべきと言われていました。が、しかし。2,000万という数字に議論が集中するのはよくない方向だと思っています。2,000万という数字だけにとらわれてしまうと本質を見誤ってしまい。取り返しのつかない損をしてしまうケースもありますのでそこには注意が必要です。

なぜかといえば先に結論から言ってしまうと、2,000万円という数字は「ある一定の平均的な条件のもと(平均値はかなり実体とかけ離れている)」「何も対策を取らずに」「かなり長生きをした」場合の「モデルケース」にすぎません。さらに現代は色々な生き方を選ぶことが出来き価値観が多様化した為、昔のように一般的なモデルケースというものが通じなくなってきています。

ですから、今から2,000万円を貯めなきゃいけなのか…と短絡的に思ったり、2,000万なんて用意できるかよ!ふざけんな!と感情を表に出す前に、きちんと自分の収入・支出・貯蓄を把握し、将来なにがしたいかのライフプランを作成し、作ったライフプランをその都度改善しながら老後に必要な対策を各個人個人が作って行く事が一番大事なのだと思います。

今回のブログは少し長くなってしまうのですが、金融庁の報告書をもとにして、何が大切なことなのか、私たちはなにをしていくべきなのか。私なりの考えをお伝えしていきたいなと思います。私の意見がすべて正しいなどと言うつもりは全くないのですが、一つの意見として頭に入れておいていただきたいなと思います。少なくとも2,000万円を貯めなきゃと思い、ライフプランを作らずに安易な投資をすると、将来後悔することにもなりかねません。今とても不安を煽る輩が増えていますのでぜひ注意をしていただきたいなと思います。(便乗詐欺なども増える予感がしています)

報告書の概略

ぜひ皆様1人1人に報告書を読んでいただければと思うのですが、かなりページ数もあるので概略をまとめました。まず報告書は現在の日本の現状についてデータをもとにまとめています。

高齢化が進み、現在60歳の人の4分の1が95歳まで生存するというデータもある。それに伴い介護・認知症の状態の人数も増加している

少子化、核家族化が進み、高齢となった親の世話を子や孫が行うというライフスタイルは減少。

 

・95年頃をピークにほぼすべての世代で収入は減少。また社会保険料などは増加しているため、可処分所得は収入以上に減少している。

・老後の生活を支える退職金もピーク時より4割近い減少をみせ、退職金がない企業も増えた。

・20代を除くすべての世代で老後のお金の不安について考えた人が半数以上いる

・老後のお金の不安を減らす為に「投資」をした方がいいと思う人はある程度いるが、実際に行っているのは少数にとどまる。

このあたりの内容はよく聞く話ではあるのですが、報告書は比較的難しい言葉も少なく、数字も(あえて?)少ない報告書になっているので、非常に読みやすいな。という印象を受けました。あらためて読み進めると収入も退職金も少なくなった現代において、老後の期間が長くなるというのは金銭的に非常に不安を感じるところです。その分働く期間は伸びましたが、60代になると給料はガクンと下がりますし、介護や認知症になったら働くこともできなくなる。

これらの現状を受けて報告書では、解決策を提示していきます

解決策

長期、積立、分散投資により資産形成を行い、老後資金を増やし資産寿命を延ばす

・積立NISA、iDeCoなどを使い資産形成を行なってほしい。

・ライフスタイルが多様化し、これまでのような「標準的家庭」というくくりでの対策が困難。各個々人が自分自身のライフプランを「見える化」し、個別的な対策を取る必要がある。

・公的年金が減少していくであろう中「自助努力」が必要

認知症は誰にでも起こること。と考え、対策をとること

などと大きな視点から対策を述べてあります。
どれも非常に大事な事ですね。ただ色々なメディアで今までも言われていることです。長期積立。分散投資。老後資金を作る。自助努力。

そんな中【ライフプラン】という単語が出てきました。私の過去の記事でも色々書かせていただいておりますが、貯蓄や投資を行う上で、一番大事になってくるのがライフプランだと私は考えています。ライフプランがなければリスク許容度がわからないので、どういう投資がベストなのかもわかりませんし、そもそも老後資金がどのくらい不足するのか、それに伴い現役時代の収入をどのくらい使えて、どのくらい貯めればよいかがわかりませんね。
報告書の中でも以下のような文が掲載されています。

現役期は、仕事や家庭など、何かと忙しい時期である。そうした時期に老
後の資産を考えなければいけないことは、本人にとってあるいはわずらわし
いことかもしれない。しかし、長寿化が進む中、現役期から老後を意識して
準備を行うことが重要であることは事実である。老後の資産を不安に思い、
資産を溜めがちであるが、過度な不安は投資や消費の抑制につながり、結果
的にマクロ的な経済活動の低下という合成の誤謬に陥る恐れもある。従っ
て、自らの現在及び今後の資産や収入・支出を把握かつ見通しを立て(「見
える化」)、安定的な資産形成を行うとともに、ライフプラン・マネープラン
を立てることで、使うべきお金を安心して使うことが経済全体にとっても望
ましいという認識を共有することが重要であろう。

つまりは老後のお金も大事ではあるが、現役時代の支出ももちろん大事。どちらが上という話ではないのです。いつどのくらいのペースでお金を使い、貯めていくか。これを知る為にきちんとライフプランを立てることが大事であると金融庁の報告書は言っているのです。

特に離婚を経験された女性に関しましては年金・退職金が少ないケースが多い事に加え、男性より老後が長いためライフプランの作成はより重要になってきます。

2,000万円貯めろ!の根拠

「ライフプランを作った方がいいのはわかった。でもやっぱり2,000万円は貯めないといけないんだろ!?そんなの無理!」

そういう方もいらっしゃると思います。
最初にお伝えしたように、この2,000万円という数字は平均的な生活から試算して、何も対策をたてなかった場合の数値です。国に文句を言う前に一度数字の根拠を見てみましょう。

報告書に高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の収入と支出についてのグラフが掲載されています。
実収入は年金収入191,880円を含めて総収入209,198円/月となります。

それに対して支出ですが

食費      64,444円
住居費     13,656円
水道光熱費   19,267円
家具家事用品    9,405円
服飾履物費     6,497円
保険医療費   15,512円
交通通信費   27,576円
教育娯楽    25,077円
その他消費支出 54,028円
非消費支出   28,240円

合計263,718円/月

となります。

つまり平均収入ー平均支出が約5万円となっており。5万円が年金で足りない赤字の部分です
5万円×12か月×30年=1,800万円 1,800万円+αが2,000万円の正体です。

さて、上記の支出の内訳ですが。これを見て何かお感じになりますでしょうか?

私はこの内容を見たときに

「老後の生活にしては高すぎないか?」

と思ってしまいました。

例えば食費の64,444円。この資料は年金暮らしの高齢者の夫婦のデータです。食べ盛りの子供がいるような家庭ではありません。そう考えると高いのではないか…?と思います。ちなみに私の62歳になる一人暮らしの母に聞いてみると月3万円前後だという事です。私の母はあまり外食に行く人ではないので、多少外食をするとしても夫婦で月5万円くらいが普通の暮らしではないでしょうか?

また交通通信費の27,576円もやや高い印象を受けます。今の時代格安スマホなどがありますので、きちんとしたプランを選べば夫婦2人で5,000円ほどでスマホは持てます。また、交通費はシルバーパスなどで割引になるところも増えますので、ざっと1万円もあれば大丈夫だと思います。通信費と交通費を合わせて約15,000円くらいで収まりそうですので、ここでも節約できそうです。

そして1番気になるのが「その他の消費支出」54,028円。その他の支出という名前になっているのでわかりずらいですが、こちらはほぼ「交際費」と読み替えていいそうです。つまり友人と旅行に行く。居酒屋に行く。映画館に行く。ミュージカルを見る。ゴルフをする。温泉に行く。このような日々の暮らしを豊かにする為のお金がここの費目に入っているそうです。(個人で楽しむ教育娯楽費の25,077円とは別に…です)

極論を言ってしまえばその他の消費支出54,028円がゼロになれば。いやゼロにまでならなくとも食費・交通通信費・その他の消費支出から5万円を削ることができれば、生涯で自助努力が必要と政府が言った2,000万円分節約ができます。

つまり、2,000万円とは貯めなければ生きるのも厳しいほど貧困となり得る。という意味ではなく。相対的に見て、余裕のある裕福な暮らしができなくなる可能性があるよ。という意味の2,000万円なのではないでしょうか。

もちろん旅行や、映画、友人との関わりなどは老後を心豊かに過ごす意味では大変大切なものです。
ただ毎月5万円越えの支出はやはり多いと感じてしまいます。

もちろんこのデータは平均から切り取ったデータなので全ての人にあてはまるものではありません。収入にしてもデータでは「厚生年金受給の夫と国民年金受給の妻」という試算で出している為、夫婦ともに国民年金のようなケースであればもらえる金額は大きく変わるでしょうし。持家の有無によっても住宅費にかける金額は変わります。車の有無、どこに住んでいるのか、いつまで働くのか。そのような諸条件によってシュミレーションの数字はガラッと変わってしまいます。ですから繰り返しになってしまいますが1人1人のライフプランを作ることがよりいっそう求められているのです。

まとめ

SNSや報道では2,000万円という言葉が1人歩きしており、その本質がぼやけてしまっていました。
この問題の本質は、年金がこれから減少したとしても国民1人1人が思い描く理想の老後を過ごすことができるのか。できないのであれば目標を修正したり、現役時代に工夫できることはないか。しっかりとしたライフプランを作成し、より豊かに老後を過ごす為の蓄えを作っていく必要がある。という点です。今はインターネットで探せば自作のライフプラン作成ツールなどもありますので、ぜひ作ってみていただく事をおすすめします。作るのに時間がなかったり、正確で実際の生活に役立つライフプランを作りたいという方は私のようなプロに依頼をするのもひとつの方法だと思います。

最後に報告書の35ページを引用させていただきます。

個々人のライフスタイルが多様化する中、金融商品・サービスも多様化
してきている。こうした多様な商品・サービスを個々人が自身の力のみで選
ぶことについては、人によって困難が伴うことも想定される。
この観点から、個々人に的確なアドバイスができるアドバイザーの存在
が重要である。現状では、その役割は主として本人に一番身近な金融機関な
どが担うことが想定されるが、業態ごとの商品・サービスが多様化している
ため、単一の業態の金融サービス提供者が全ての商品・サービスを俯瞰した
アドバイスを行うことには難しい面がある。このため、特に強く求められる
のは顧客の最善の利益を追求する立場に立って、顧客のライフステージに応
じ、マネープランの策定などの総合的なアドバイスを提供できるアドバイザ
ーである。こうしたアドバイザーとなり得る主体としては、投資助言・代理
業、金融商品仲介業、保険代理店やフィナンシャルプランナーなど様々な業
者が存在する。米国では証券会社などの金融サービス提供者から独立して、
顧客に総合的にアドバイスをする者が多数いるが、日本においてこれに類似
する者は存在するものの、まだまだ認知度は低く、数は少ない。今後は認知
度向上に努めるとともに、そのサービスの質的な向上に努めることが望まれ
る。

報告書でもアドバイザーの存在が重要であると書かれています。そしてアドバイザーに強く求められるものは顧客の最善の利益を追求する立場とあります。私は今まで色んな金融業界の人と会ってきましたが、お客様の利益を一番に考えて活動されている方はほとんどいませんでした。自分の成績。手数料。収入。どうしてもそこを重視してしまい、お客様の利益がおざなりになっている人が非常に多いです。

ですからアドバイザーを探す際には完全独立型のファイナンシャルプランナーは一つの選択肢として有効だと思います。金融機関から手数料をもらっていないという事は金融機関側の売りたい商品に縛られずお客様だけを向いてアドバイスができるからです。

少子高齢化により、年金支給額が減って行く事は間違いないと思います。ライフプランを作り、資産運用をして、自分のお金は自分で守っていきましょう。

追伸

本日これを書いているのが6月11日なのですが、報道で自民党や麻生財務大臣が報告書の受取の拒否や撤回を金融庁に求めたと流れてきました。国民に誤解や不安を与えたから。というのが理由との事ですが、データはたしかに間違いのないもので、受け取り方の問題はあるにせよすべて事実が書かれている報告書だと思います。国民に誤解を与えたというのであればきちんと国会でどこが間違っていて、誤解を与えてしまったのか、真実はどうなのか。をきちんと説明する責任があると思います。