こんにちは。三島友紀FP事務所の三島です。離婚の原因のひとつとして夫婦どちらかの不倫があります。ワイドショーで芸能人などが会見を開いているように不倫というのは不貞行為と言われ立派な離婚原因となりうる行為です。不倫をされた配偶者は不倫した一方に対し慰謝料を請求し、離婚をする。いたって普通(という言葉が正しいかわかりませんが、離婚の流れとしては普通です)の流れです。

本日2019年2月19日にその不倫に関して最高裁で興味深い判決が下りましたので、ちょっとお伝えしようと思います。

夫は不倫した妻でなく、不倫相手を訴えた!

事案は以下の通りです。なるべく法律を学んでいない方にでもわかりやすいように平文で書かせていただきます。

【夫Aと妻Bが結婚しており、子供が2人います。夫Aは結婚後仕事が多忙で家に帰宅しないことも多い働き方をしていたそうです。そして結婚14年目の時、妻Bが夫Aの勤める会社に入社をしました。そこで不倫相手Cと出会います。なお、この妻Bが入社したころからAとBの間での性交渉はいっさいなかったとのことです。Bが入社して半年ほどたったころからBとCが不貞行為におよぶようになりました。(TVのニュースによると月に20回以上に及ぶ月もあったとのことです。げげげ)
BとCが不倫関係をもってから1年後夫Aが妻Bの不倫関係を知ることになります。ただその時点では妻Bはすでに不倫相手Cとの関係を解消しており、話し合いの結果AとBはそのまま夫婦として同居を続けることにしました。
しかしその4年後、子供が大学に入学するのをきっかけに、妻Bは家を出て別居することに。その後半年間Aの待つ家に帰ることも、連絡をとることもありませんでした。そこで夫Aは家庭裁判所にBを相手取り夫婦関係調整の調停を申し立て、ほどなくして離婚の調停が成立しました。
離婚から2年後。夫Aは不倫を原因とした離婚によって精神的な損害を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償請求(離婚による慰謝料の請求)の裁判を起こしました。ただしその相手方は元妻Bではなく不倫相手Cなのです(男の未練?のようなものが感じ取れますね。別れたとはいえ妻は若い男(想像)に騙されたのだ。とでも思っているのでしょうか)】

ここで裁判上問題になるポイントを整理しましょう。

  1. 夫Aは妻Bでなく不倫相手のCに対して裁判を起こした。
  2. 裁判の目的が不貞行為による損害賠償請求でなく、離婚による慰謝料の損害賠償請求である。
  3. 訴えを起こしたのが不貞行為を知ってから7年後。離婚が成立してから2年後だという点。

1、2審では、原告(夫A)の訴えを認めて、元不倫相手のCに約200万円の慰謝料を支払うように命じました。1審の判決では「不貞行為の発覚をきっかけに婚姻関係は悪化し、離婚に至った」と認定し、損害賠償の請求の時効についても離婚による慰謝料請求においては「離婚成立時」から起算されるとして、時効も成立しておらず訴えは適法だとしました。
※損害賠償請求の時効…損害及び加害者を知った時から3年。行為の時から20年を経過した場合は時効により権利は消滅する(民法724条)

しかし本日の最高裁判決では1、2審を破棄し、不倫相手Cの勝ち。CはAに一銭も支払う必要はない。という逆転判決となりました。どういう理由からこのような結論に至ったのでしょう。

要件から考えてみる

最高裁の判旨(判決の理由)としては以下の通りです。(要約)

「夫婦の一方に対し離婚による慰謝料を求めることは当然にできる。ただ本件は不貞関係の第三者への訴えである。本来離婚による夫婦関係の解消は当該夫婦の間で決められるべき事柄である。したがって、第三者であるCはその不貞行為そのものによる損害賠償責任を負うことは当然といえるが、不貞行為により婚姻関係が破綻して離婚に至ったとしても、第三者Cがあえて離婚させることを意図して不当な干渉をするなどして離婚に至らしめたような特段の事情がない限り第三者に対し、離婚の慰謝料を請求することはできない

法律の勉強をしたことがある人はわかると思いますが、法律家は具体的な事案を要件から考えて答えを出す。という頭を持っています。今回のこの離婚の裁判においても「不法行為に対する損害賠償請求」の要件から考えないといけません。要件というのは「条件」と読み替えてもかまいません。この条件が揃わないと損害賠償請求はできない。という事ですね。

不法行為における損害賠償の要件

  1. 行為者の故意又は過失がある行為に基づくこと
  2. 他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したこと
  3. 損害の発生
  4. 行為と損害の発生との間に因果関係があること
  5. 行為者に責任能力があること

まだ本日出た判決なので法律の専門家の方の意見がでていませんから、ここから先は私見にはなりますが、要件の中で一番問題となるのは4番なのかな。と思います。AB夫婦が離婚した原因としてBの不倫は理由の中の大きな割合を占めているのだとは思いますが、離婚というのは本人達の意思による行為という性質が強く、あくまで不倫は意思決定の一要因にすぎない。という判断なのではないかなと思います。

つまり、不倫相手CがBと不貞行為に及んだ→<因果関係>→離婚 とは繋がらない。という判断なのでしょう。

これはおそらく離婚をした時期によっても判決は変わるのではないかと個人的には思います。今回の場合不貞行為から離婚まで5年が経過しています。5年も経過していると「5年前のあの不貞行為が理由であなたと離婚します」とはならないのでしょう。

『いやいや、その時の不貞行為が原因なのならその時離婚に至っていたのではないですか?それから5年も経ってからの離婚なのですからそれまでの5年間のいろんなことが積もり積もった上での離婚ではないのですか?』

そのように言われてもおかしくない。という事なのでしょう。

どちらにせよ。今回最高裁は不倫をした第三者は直接離婚の原因を作ったという理由で慰謝料をとることはできない。という判断を下しました。今までなかった判例であり、これからの離婚裁判において貴重な判断基準となるはずです。

じゃあ不倫されたら泣き寝入りか!?

今回の裁判では不倫された側の夫Aが敗訴となり、少しかわいそうな結論になってしまいました。では不倫をされた側はこれから裁判になったとしても泣き寝入りになってしまうのでしょうか。いえ、けしてそんなことはありません。方法は2つ取れます。

1つめは妻に離婚に伴う慰謝料請求を起こすのです。今回の裁判は相手が第三者のCであったため、Aは負けてしまいましたが、通常妻Bを相手にした裁判であれば問題なく勝利したでしょう。民法752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められており、不貞行為というのは明らかにこの法律に違反するからです。ですから不倫をされた場合相手方ではなく、配偶者に対して訴えを提起するべきなのです。

もう1つは相手方への損害賠償請求は不貞行為について訴えを提起する。という事です。離婚に伴う慰謝料請求では敗訴してしまいましたが、判例では不貞行為によって精神的な苦痛を受けたとして損害賠償請求をした場合は勝訴判決がでており、他の要件を欠いたりといった事情がなければ、今回のケースにおいても勝訴できる可能性はおおいにあったといえます。ですから不倫の証拠を見つけた場合なるべく早めに対応をとることが大切だといえます。今回のように3年を超えてしまうと時効によりもう訴えることはできなくなってしまいます。

まとめ

本日はとても話題性の高い判決がでたので、それについて解説させていただきました。

不倫。不貞行為からの離婚が起きた場合。
「不貞行為による精神的苦痛に対しての損害賠償請求」と
「離婚による精神的苦痛に対しての損害賠償請求」とはまったく考え方は別だという事を理解すると内容がよくわかるかと思います。

不倫をされると精神的にとてもショックを受けます。辛くて何も考えられない。という事もあるかと思いますが、その後どういう行動をとるかによって未来は変わっていきますので、なるべく早く話し合いの場を作り、どうしていいかわからない人は専門家のアドバイスなども受けながら正しい行動をなさってください。