離婚をする際に、財産分与はみなさん当然のように行います。養育費も子供がいれば取り決めはするでしょう(実際に支払いがされるかどうかは別として…)。慰謝料もその必要性によって取り決めると思います。しかしこれらの手続きに比べて明らかに取り決める事が少ない手続きがあります。もしかしたらそんなことができるんだ。と知らないで離婚される方もいらっしゃるでしょう。それが厚生年金保険料の分割手続きです

後述しますが年金分割は合意さえあれば裁判所などを通さずに、年金事務所に当事者が直接申請をしますので件数を正確に調べることができます。令和元年12月厚生労働省年金局によると平成30年度の離婚件数は212,871件。そのうち年金分割を行ったのは28,793件。わずか13%程度なのです。

老後2,000万円問題でも提起されたように、年金だけで老後の生活を賄う事はできませんが、それでも老後の生活の大きな柱であることは間違いありません。しっかり制度を理解して離婚を考える時には忘れずにしておきましょう。

厚生年金保険料の分割とは

この制度ができる前は離婚した場合に、会社員の夫と専業主婦の妻が離婚した場合、今まで夫を支えていた妻は厚生年金を納めていないので、自分自身の国民年金や結婚前に働いていた分のわずかな厚生年金しか受け取ることができない状態でした。夫は夫名義で厚生年金に加入しているので老後に厚生年金分の支給ももらえるのに対し、妻はそれがない。それが公平を欠いているという事で平成16年度に法改正があり

婚姻期間中の厚生年金保険料を夫婦間で分割 できるようになりました。

婚姻期間中に支払った保険料は、夫婦が共同で納めていたものとみなすのですね。

年金の分割対象となるのは公的年金のうち、厚生年金と旧共済年金です。国民年金は分割の対象にはなりません。また企業年金や確定拠出年金も対象にはなりません。またあくまで対象となるのは婚姻期間中の支払保険料になりますので、婚姻する前の保険料は関係ありません。

分割の方法は平成20年4月を境に計算方法が変わります

離婚をする時に年金分割を請求する時には平成20年4月以降の厚生年金保険料納付記録と、平成20年3月以前の納付記録で分けて考えます。

どのように考えるかというと…

平成20年3月までの納付分…夫婦間の合意または裁判所の決定があれば、最大で1:1の割合になるように分割が可能(合意分割)
平成20年4月以降の納付分…夫婦間の合意がなくとも一方の請求のみで、最大で1:1の割合になるように分割が可能(3号分割)

となります。

平成20年4月以降の納付分は合意がなくても当然に分割ができるのです。納付済みの厚生年金保険料が少ないのは女性の方が多いでしょうから女性にとっては得でしかないこの制度。にもかかわらず13%ほどしか行われていないので、それだけこの制度を知らないのだと思います。

※なお、平成20年3月以前に婚姻期間があって年金分割を行う場合は基本は合意分割を使い平成20年4月以降の分も含めて分割の取り決めをします。また平成20年4月以降しか婚姻期間がなかったとしても、完全に共働きで年金の3号被保険者となっている期間が0の場合も合意分割を使います。

年金分割はどうやってやるの?

年金分割の方法は合意分割と3号分割によっても異なりますが、最終的には年金事務所の窓口において分割の請求をすることになります。

3号分割は単純です。当事者どちらかが年金事務所で請求をすればよいだけです。

合意分割の場合は当事者での分割の合意が必要です。(その際には事前に年金分割のための情報通知書を請求しておくとよいでしょう。年金分割の対象期間など必要な情報がのっていますので話し合いの材料になります)

合意ができた場合は夫婦二人で年金事務所に行き請求をするか、公正証書などで合意書面を作成しどちらか一方が年金事務所で請求することになります。(実際には他の財産分与や養育費などと合わせて離婚公正証書を作りその中で年金分割についても記載をしていくのが一般的です)

合意ができない場合には裁判所に調停を申立て調停にて話し合いをすることになります。調停でも話がまとまらない場合は裁判所の審判または離婚裁判の付帯処分によって決定されます。

年金分割はライフプランを考える上で最重要

以上のように合意がなくとも年金分割はできてしまいます。

そして熟年離婚になればなるほど年金分割によって受給できる年金額の変動は大きく無視できないものになります。今は人生100年時代ともいわれていて老後の期間がとても長くなっています。その老後期間を支える非常に大事な年金。

離婚の時にしっかりと手続きをしておくだけでその支えが太く分厚くなるのです。

離婚時は離婚後のライフプランをしっかりと考えるとともに、年金分割を忘れずに行うことが実は最も大事な事かもしれません。