離婚協議において養育費を決める時には養育費をいつまで払うべきなのか?という点において夫婦間で意見が分かれる事が多くあります。

養育費を支払う側にとってはなるべく養育費の負担を少なくする為20歳。または高校卒業まで。と主張する事が多く、養育費を受け取る側にとっては大学卒業まで。と主張する事が多いと言われています。

実際にはどのような基準で定めればよいのでしょうか?

養育費はいつまで支払うべきか?

養育費は民法766条において定められている「子の監護について必要な事項」として子供を養育していない親が養育している親に対し支払う「未成熟子の養育に要する費用」で、その内訳としては子の衣食住の費用、教育費、医療費などが含まれています。

ここでいう未成熟子とは未成年者とは違う概念です。

身体的・精神的・経済的に成熟前にある為、働く事が期待できず、親の扶養を要する状態にある子とされています。もちろん、乳児・幼児・少年(16歳未満)が未成熟子にあたるのは当然です。

問題となりうるのは扶養を要する状態が終了し、「未成熟」でなくなった言われるのがいつか?という点です。

家庭裁判所の判例などによれば、一般的には20歳未満の子は未成熟子であり、20歳を迎えたら成熟となる運用がなされています。特別な取り決めがない限りは20歳が基本となります。

そのうえで、大学進学率が上昇した現代においては大学に進学する事は一般的になってきており、離婚がなかった場合には主に夫の扶養のまま大学卒業まで生計を維持する事が考えられる場合は大学卒業まで養育費を認める事はおかしな事ではありません。

ただ中には離婚していない2人親の子であっても大学に進学し、一人暮らしをし、生活費や学費はバイトと奨学金で工面している子はたくさんいます。そのような子の場合は裁判所の判断としては養育費を認めない事も考えられます。

つまりはケースバイケースという事です。

実際に養育費の終期はどのように書くべき?

夫婦間の協議によるので必ずこう書かなければいけない。という事はありませんが一例としては以下の様な形が考えられるかと思います。

「甲は乙に子が成年に達する日の属する月まで毎月金○○円を以下の口座へ振り込む。なお振込手数料は甲の負担とする。」

「前項の養育費の終期に関しては成年に達する日を迎えた時点において子が大学、専門学校などの教育機関に在学中の場合、その教育機関を卒業する日が属する月まで養育費を支払うものとする」

「前二項の養育費につき、成年に達する日の属する月を迎える前に子が進学をせずに就労を始めた時は就労を開始した日の属する月をもって養育費の支払は終了するものとする」

基本は20歳という終期にしておき、20歳時点で在学中の場合は卒業するまで延長。また、20歳を迎える前に子が働き始めた場合は働き始めた時点で養育費を打ち切る。

未来の事ですから子がどのような進路を進むか100%予測する事はできないので、このように終期は動かせるようにしておいた方がよいと思います。

成人年齢の引き下げと養育費の関係

平成30年6月13日に民法の一部を改正する法律が成立しました。この改正によって民法の成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。(施行日:令和4年4月1日)

これによって養育費の終期が18歳に下がってしまうという事はあるのでしょうか?

結論から言うとそのようなことはありません。このことは参議院法務委員会でも養育費の終期と成人年齢引き下げは連動しない確認がされています。

未成年者と未成熟子は違う

先ほどもお伝えしていたとおり、養育費は経済的に自立していない未成熟子の養育に要する費用です。養育費の終期は未成熟子ではなくなった時が基準となります。

成人年齢の引き下げはあくまで法定代理人(親)の同意なく様々な経済活動(例えば携帯電話の契約、クレジットカードの作成、雇用契約等)をできるようにして、経済の活性化の一翼を担う点が一番の目的と言われています。

成人年齢が引き下がった=未成熟ではなくなる時期も引き下がる。とはなっておりません。

ですので成人年齢が引き下がる令和4年以降も実務上は20歳が養育費の終期の基準という点は変わりません。

すでに離婚公正証書等において養育費は「成人に達する日まで」と定められている場合は?

民法改正法が成立・施行する前に、当事者によって離婚公正証書や離婚協議書で養育費の終期は「成年に達する日まで」と定められていた場合、改正法の成立・施行によって何か影響は受けるのでしょうか?

これは当事者の意思解釈によって判断する問題です。その離婚公正証書が作られた当時は、成人年齢は20歳であったわけですから、当事者の意思は、養育費の終期を「満20歳に達する日まで」とするのが普通です。そして、その背景には子が経済的に自立される時期などの諸事情を総合的に考慮して判断されたものと考えられるので、成人年齢の引き下げによってその事情に変化は生じないでしょう。

結果、過去において文書で養育費の終期は成人を迎えるまで。と定めていたとしても成人年齢が引き下がった影響は受けないものと考えられます。

このことは平成30年6月12日に改正法を審議した参議院法務委員会での付帯決議がされています。