こんにちは。三島友紀FP事務所の三島です。

映画やドラマなどで悪いことをしたドラ息子に業を煮やした父親が「お前なんか勘当だ!家から出ていけ!家族の縁を切る!」などというシーンがあります。しかしこれって実際に言われたとしてどういう事が起こるんでしょうか。離婚の場合であれば離婚届を出せば夫婦は他人となることができますが、勘当届なんてものは聞いたことがありませんよね。なにか手続きを取ると親子の関係を断絶することができるのでしょうか。

結論から言えば勘当という制度は今の日本にはありません。親子関係を消滅させる制度はごくごく例外を除いて存在しないのです。

勘当ってそもそもなに?

日本語としてのルーツを調べてみましたが、勘当という言葉自体は古代、はるか昔から存在したようです。実際に親子関係の断絶を勘当と呼ぶようになったのは室町時代以後のこととされているようです。江戸時代には勘当届や勘当帳というものも存在しており、きちんと制度として成り立っていたようです。ちなみに勘当帳に記されると勘当される事になるのですが、この帳付けを無効にすること(帳消し)が現在の「帳消し」の語源になったといわれています。

明治時代に制定された明治憲法の下の旧民法にも勘当の制度があり、少なくとも戦前までは勘当という制度は国が認めた制度だったことがわかります。戦前は勘当をうけるとその家から離籍をされてしまうこととなり、当然ながら相続を受ける権利や家督を引き継ぐ権利がなくなってしまうことになりました。

現在では「勘当」は存在しない

勘当が制度として存在したのは「旧民法」であり、太平洋戦争より前の時代の話です。戦後、現行民法が制定されるときに勘当という制度は廃止され、今では言葉のみが残っている状態なのです。

ということは、父親が「勘当だ!」といってドラ息子を家から追い出すことにしたとしても、それはあくまでも一緒に住むという形を取らなくなっただけであり、親子としての関係性はそのまま継続することになります。父親に相続が発生したら当然家から追い出されたドラ息子も相続人であり、遺産を受け取る権利は残っているのです。ですから追い出された息子とそれ以外の家族との間で遺産について争う事態が起きてしまうことがあるわけなのです。

親子関係を解消する方法は?遺産を特定の相続人に渡したくない場合は?

それでは現在の制度では親子関係を解消する方法は一切ないのでしょうか?ごくごく例外ではありますが、ひとつだけあります。それが「特別養子縁組制度」です。特別養子縁組は普通養子縁組と違い、子供にとって実の両親との親子関係がなくなります。養親が唯一の親となるわけです(反対に普通養子縁組は実の親との親子関係はなくなりません。子にとっては実の親。養親と2人の親を持つことになる制度なのです)

ただし、特別養子縁組制度は基本的に子供の為の制度であり、その成立の為の要件は非常に厳格に決められています。その一つに子供の年齢条件があります。特別養子縁組を受ける子供は6歳未満でないといけないと規定されております。(現在法改正によって15歳未満に改正しようという動きがあります。昨今の児童虐待などをみているととてもいい動きだと私は思います
つまりはドラ息子の非行により親子関係を解消したいという親の気持ちで利用することは絶対に不可能な制度なのです。ですから現在のところそのような理由で親子関係を解消する方法はないと言わざるをえません。

ただ、「あんな息子に遺産は渡したくない!」という感情があるのも理解できます。

遺産、相続関係に限っての制度ではありますが、そのような場合に検討できる制度としては「相続排除」と「遺言による遺産分割の指定」があります。

相続排除とは被相続人に対し、虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合に、被相続人が家庭裁判所に請求を申し立て、家庭裁判所の審判または調停によって相続権を失わせる制度です。

ただし、この虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行といった要件はかなり厳しく判断されます。知らない女と駆け落ちをした。稼業を継がなかった。借金を作って自己破産した。といったぐらいの内容では相続排除はされません。実際に相続排除が認定されたケースもかなり少ないです。ちょっと現実的には利用しづらいかもしれません。

となると残された方法としては「遺言による遺産分割の指定」です。これは生前に遺言書に息子に渡す遺産について金額や量をあらかじめ定めておき、法定相続分の遺産がいかないように指定をしていく制度です。有効な遺言書が残されていればその効力は残された相続人全員で別の分け方を定めない限り、強制力が働くので実際に行うとしたらこの制度が現実的でしょう。

注意点としては「息子には一切の遺産を渡さない」といった指定はできないという事です。相続に関しては配偶者と子供、親に関しては最低限これだけは受け取ることができる権利が法律で定められています。これを遺留分といいます。子供の場合は遺留分は法定相続分の2分の1と決められていますので、それを下回る金額の遺言書は遺留分を侵害していますので、その子供は他の相続人に対し、「遺留分に満たない分の金額を俺によこせ!」という請求を行うことができます。これを遺留分減殺請求権とよびます。

まとめ

現在の日本の法制度において勘当という制度は存在しません。仮に「勘当だ!」といって家を追い出した子供がいたとして、「あいつは勘当したから遺産はあいつのところにはいかない。残ったみんなでこういう風に分けなさい」などと話していたとしても、それは無効です。遺産分割や土地の名義変更を行うには追い出された息子の意見も必要になってきますので(印鑑証明や実印など)もしそのような追い出した子供がいる場合はできることなら連絡を取れるようにしておき、少しでも関係性を改善しておくことが、いつかくる相続の時に遺族が大変な思いをしないことにつながります。