前々回の記事で相続税の概要について。前回の記事で相続税の節税方法(前編)について解説いたしました。もしいきなりこのページに来られた方はよろしければそちらをご覧いただいてから本記事を読んでいただくとより相続税の節税について理解が深まると思います。

相続税ってなんだ?

相続税の節税方法12選~その1~

本記事は前回の続きで相続税の節税方法12選のうち、後半6つをご紹介致します。

また前回同様、私は税理士ではありませんので税務の個別具体的なお話はできませんのでご了解ください。あくまで一般的な内容に限ってお伝えさせていただきます。

相続税の節税方法12選

①暦年贈与
②相続時精算課税制度
③相続税の配偶者控除
④結婚子育て支援の贈与
⑤教育に関する資金贈与
⑥住宅取得等資金贈与
⑦贈与税の配偶者控除
⑧養子縁組
⑨小規模宅地等の特例
⑩賃貸住宅の経営
⑪生命保険の非課税枠
⑫配偶者居住権の活用

前回と同じ表です。
私が選んだ相続税の節税方法12選。前回はそのうち1~6までを解説致しました。
ここからは7番目から解説していきます。

7、贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除とは一定の条件を満たした夫婦間の「不動産に関する」贈与に特別控除を与える制度です。
具体的には
1、夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われる。
2、贈与対象が居住用の不動産。又は居住用不動産を取得するための金銭。
3、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産又は、贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けたものが現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みがある事。

以上の要件に当てはまる贈与の場合は贈与税の申告をする事によって通常の110万円の贈与税の基礎控除以外に最大2,000万円まで控除ができるようになります。

この制度を使えば夫名義の不動産を妻に贈与する事によって夫の相続財産を下げて、財産税を下げる事ができます。しかもこの制度を使った贈与は前回の記事にも載せた「相続開始前3年以内の贈与は相続財産に参入され相続税の対象になる」というルールの対象から外れます。

使い勝手のよい制度といえると思います。

8、養子縁組

相続税の基礎控除は推定相続人の人数によって決まります。

【相続税基礎控除額=3,000万円+600万円×推定相続人の数】

つまり推定相続人の数が多ければ多いほど基礎控除額も多くなり、相続税も少なくなります。
・推定相続人が2人=3,000万円+600万円×2=4,200万円
・推定相続人が6人=3,000万円+600万円×6=6,600万円

そのルールを使って養子縁組により養子を増やして推定相続人を増やす節税方法です。
身分行為になり、戸籍も変わってしまう(つまり苗字も変わる)のであまり気軽にやるべき節税方法ではありませんが、孫を養子にしたりするなどは苗字も変わらない為、昔は割とよく行われていたと聞きます。

9、小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、小規模な宅地を相続した場合、一定の要件を満たすとその宅地の評価額を最大で80%下げることのできる制度です。

一定の要件ですが、まず大前提として
「被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族」の事業用又は居住用の宅地等のうち一定のもの(建物又は構築物の敷地の用に供されている宅地等)を相続によって取得した場合。
があげられます。

基本的には被相続人が住んでいた住居や事業用の敷地建物が対象ですが、被相続人が所有者だが子供が住んでいた住居(生計は一にしている)等も対象となります。

その上で居住用不動産(特定居住用宅地等)の場合は
①被相続人が住んでいた宅地を下記の者が相続した場合摘要される
イ、被相続人の配偶者
ロ、被相続人と同居していた親族
(相続開始の直前から相続税の申告期限までその建物に居住し所有している必要があり)
ハ、被相続人と同居していない以下の親族(家なき子)
・被相続人に配偶者がいない事
・相続開始の直前において同建物に居住している相続人がいない事
・相続開始前3年以内に自己、自己の配偶者、自己の3親等内親族、自己と特別な関係のある法人の所有家屋に住んでいない事

②被相続人と生計を一とする親族が住んでいた宅地を下記の者が相続した場合摘要される
イ、住んでいた生計を一とする親族
ロ、被相続人の配偶者

このあたりの判定はややこしいので税理士に確認してみることをお勧めいたします。

上記の要件が当てはまる場合、宅地のうち330㎡までの面積において評価額が80%減となります。

※なお、事業用宅地の場合は要件や限度面積、減額割合が変わりますがここでは割愛致します。

10、賃貸住宅の経営

不動産会社が資産家に相続税対策でアパート経営しませんか?と営業をかけているのを聞いたことはないでしょうか?賃貸不動産経営はたしかに相続対策になります。理由は以下の3点です。

①現金と土地建物だと土地建物の方が評価額は低い
現金1,000万円は相続財産の評価も1,000万円ですが、不動産になると路線価という基準を使う為、およそ20%減。800万円程度の評価額になります。

②土地建物が賃貸用だと減額措置がある
アパートなど第三者が利用する賃貸物件を所有している場合、自己の居住の用に供する建物と比べて「借地権割合」や「借家権割合」によって評価額のさらなる減額を受けられます。仮に50%軽減なら①で800万の評価額だったものが400万になります。

③小規模宅地の特例を受けられる
一つ前の項でも説明した小規模宅地の特例が受けられます。居住用ではなく事業用となるので80%減まではできず200㎡まで50%減額になります。
①、②で400万円の評価額まで下がった金額がさらに50%下がり200万円まで下がります。

つまり現金で1,000万円持っているのと、1,000万円の賃貸アパートを持つのであれば相続税の評価額が800万円近く変わる事になります。

ただしアパート経営には空室リスクもありますし、相続発生時において3年以上アパート経営をしていなかった場合は③の小規模宅地の特例は受けられませんのでご注意ください。

⑪生命保険の非課税枠

生命保険の非課税枠とは被相続人を被保険者(保険の対象の方)とした保険により生命保険金が相続人などに支払われた場合、一定の金額までは相続税の対象から外す事にしている枠の事です。生命保険金にも相続税はかかるのですが、この非課税枠を超えない限りは相続税は発生しません。

計算方法は

生命保険の非課税枠=法定相続人×500万円

となります。

現金のまま持っておくよりも生命保険に資産を移しておくことで実質的に基礎控除が増えたのと同じ効果が得られます。

⑫配偶者居住権の活用

配偶者居住権とは、2020年4月から施行された新しい制度です。
簡単にお伝えすると不動産に対する権利を「所有権」と「居住権」に分ける制度です。

夫が亡くなった時に2,000万円の自宅に住んでいた場合、この制度が始まる前は
①2,000万円の自宅を妻に相続させる
②2,000万円の自宅を子に相続させる
③自宅を売却し1,000万円ずつ現金を妻・子に相続させる。
の3つのパターンしかありませんでした。ですので③以外を選ぶと遺留分を侵害するなど不公平が起こり、不公平が起きないようにするには不動産を売却するしかありませんでした。(現金など他の財産はないとした場合)

この制度が始まった事によって第四の選択肢として
④2,000万円の不動産を1,000万の「所有権」と1,000万円の「居住権」に分け、2人で分ける
といったことが可能になりました。

これによって遺留分の問題や配偶者の生活費の問題など色々と解決できるようになったのですが、その副産物として節税にもつながることになりました。

どういう事かというと分離した権利のうち「居住権」については居住権を相続したもの(主に配偶者)が亡くなった時に権利そのものが消滅してしまうのです

つまり元々2,000万円の不動産が分割して1,000万円の「所有権」と1,000万円の「居住権」に分かれた場合において、居住権を取得したものが亡くなった場合「居住権」は消滅し1,000万円の「所有権」のみが残ります。不動産の価値を下げる事ができるので節税になります。

ただ配偶者居住権もかなり複雑怪奇な制度なので利用するときには十分情報収集をしてからやるようにしてください。個人的にはあまり賛成しかねる方法です。

まとめ

いかがだったでしょうか。相続税の節税方法12選。

相続税の節税は大きく分けると2つのやり方があります。

1つは被相続人の財産を生前により多く相続人等に移動させる方法。

もう1つは相続税の控除や制度を効果的に使う方法です。

被相続人の財産を生前により多く相続人に移動させる方法としては
①暦年贈与
②相続時精算課税制度
④結婚子育て支援の贈与
⑤教育に関する資金贈与
⑥住宅取得等資金贈与
⑦贈与税の配偶者控除
が該当します。

相続税の控除や制度を効果的に使う方法としては
③相続税の配偶者控除
⑧養子縁組
⑨小規模宅地等の特例
⑩賃貸住宅の経営
⑪生命保険の非課税枠
⑫配偶者居住権の活用
があげられます。

自分の財産を知り、かかる相続税を知り、制度を知れば相続税は減額できます。
ただ中には複雑な制度もありますし、年月が経てば制度も変わります。
対策を実際にたてる際には、相続税に詳しい税理士など専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。